医療法人設立による節税効果について
医療法人を設立した場合の節税効果は、以下のとおり、たくさんあげることができます。
しかし、医療法人設立により、社会保険に加入した場合、この社会保険の負担によって、節税効果が減じられることもあります。
したがって、節税効果のみだけではなく、最終の手取り額をもって、法人設立の効果を検証する必要があります。
主な節税効果
法人税率の適用
個人経営の診療所の場合、事業所得に係る所得税の税率は、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる「超過累進税率」です。
これに対して、医療法人の所得に係る法人税及び住民税の税率は、所得に対して一定の税率を適用する「比例税率(資本金1億円以下は2段階比例税率)」となります。
個人では、最高税率は50%(所得税40%、住民税10%)ですが、法人の場合、最高税率は約40%ぐらいとなります。このように、法人税率が適用されることにより、税負担が軽減されます。
給与所得控除の適用
理事の報酬は給与所得となるので、給与所得控除の適用を受けることができます。
その結果、課税所得が圧縮されます。
【例】1千万円超の給与所得の場合、{収入金額×5%+170万円}が給与所得控除されます。
家族への所得の分散
個人経営の診療所の場合、医業に専従していない親族に支給した給与は必要経費に算入することができません。
これに対して、医療法人の場合、親族が医療法人の理事に就任し経営に参画することにより、役員報酬の支給が可能であり、支給した役員報酬は、適正金額であれば医療法人の損金に算入されます。
このような所得の分散が容易であり、さらに、親族が受け取った役員報酬は上記の給与所得控除の適用を受けることができるので、医療法人、院長先生および親族、全体としての節税効果があります。
退職金の損金算入
個人経営の診療所の場合、院長先生等に支給する退職金を損金化することはできません。
これに対して、医療法人の場合、理事長である院長先生および理事である親族に退職金を支給することができ、在職時の功績にふさわしい額(適正額)であれば、損金化することで、医療法人の所得金額を圧縮することができます。
医療法人は営利性の否定から、剰余金配当が禁止されていますが、適正額であれば、剰余金を退職金として支給することが認められることになります。
役員退職金の支給によって、残余財産の残額を調整することもできます。
これにより、解散時の残余財産の帰属先が国や地方自治自体になるというデメリットを補うことができます。残余財産の帰属先について詳しく
理事長等が受け取った退職金は、退職所得として所得税および住民税が課税されますが、老後の生活保障等を考慮し他の所得に比べて税負担が軽減されています。
したがって、毎年支給される理事長等の報酬を下げて、退職金を増やすことで、適用税率を下げることができますので、役員報酬と退職金の緻密な設定がさらなる節税につながります。
【退職金の目安】一般的な役員退職金の目安の金額は下記の算式で求めることができます。
退職時の適正役員報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率(1~3倍)
損金算入できる支出が増える
個人経営の診療所の場合、生命保険の保険料は、生命保険料控除として最高で5万円までしか所得控除が受けることができません。
これに対して、医療法人の場合には、一定の契約条件を満たした生命保険や損害保険契約等の保険料を損金にすることができます。
生命保険は、役員退職金の支払原資や役員にもしものことが生じた場合の事業保障資金に充てること等に活用できますので、その活用を積極的に検討すべきと考えます。
その他、医療法人名義の車両の場合は、車両関係費について全額損金算入でき、また、院長先生の出張の場合にも宿泊費や諸経費の実費のほか日当を支給することができる、など損金算入項目が増えます。
赤字の場合の7年間の繰り越し控除
個人経営の診療所の場合、3年間である欠損金の繰越控除が、医療法人の場合、7年間にわたり繰越控除が可能になる点もメリットとしてとりあげられています。
社会保険診療報酬に対する源泉徴収
個人経営の場合、社会保険診療報酬支払基金から支払を受ける診療報酬に対して一定額が源泉徴収されます。
これに対して、医療法人の場合、源泉徴収がありませんから、納税のタイミングを遅らせることができ、当面の資金繰りの自由度が増す場合があります。
もっとも、これはタイミングの問題であり、節税といえるかは疑問です。
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