TOP » Focus » 持分のない医療法人への移行
持分のない医療法人への移行
持分のない医療法人への移行とは?
平成19年4月1日以降、出資持分のある医療法人を新たに設立することはできなくなりましたが、それまでに設立された持分のある医療法人については、当分の間存続する旨の経過措置がとられています。
この経過措置がとられている持分のある医療法人について、持分の払戻請求権の存在に問題があるとして、期間限定で、持分のない医療法人へ移行する認定医療法人制度が促進されています。
認定医療法人制度とは、出資持分のある医療法人から出資持分のない医療法人への移行計画を国(厚生労働大臣)が認定する制度で、税制優遇措置や低利の融資などを受けることもできます。
令和3年5月28日に医療法の一部を改正する法律が公布され、この移行計画認定制度は令和5年9月30日まで延長されました。
再更新され、この制度を利用する場合は令和8年12月31日までに移行計画の認定を受ける必要があります。
持分のある医療法人の不都合な点について
そもそも認定医療法人制度は、出資持分のある医療法人のどのような不都合点を解決するための制度なのでしょうか。
厚生労働省は、持分の払戻請求権の存在を医療法人の経営に与える直接的な影響とし、相続税・贈与税による影響を間接的な影響として、以下のように紹介しています。
持分の払戻請求権の存在
例えば、医療法人設立時に出資金総額1,000万円のうち250万円を出資した出資者のA氏が、この医療法人を退社する際に、医療法人に対して自己の持分(1/4)に相当する財産の払戻しを求めることができます。
A氏の退社時に医療法人の純資産が3億円に増加しているときは、医療法人はA氏に対して3億円の1/4の7,500万円の支払い義務が発生することになります。
このような多額の払戻請求権の存在は、医療法人の安定的な経営を妨げる要因になりかねません。
相続税・贈与税による影響
- 出資者が死亡し、相続が発生した場合
- 出資者が亡くなった場合、その出資者の相続人は出資者の持分を相続したことによる多額の相続税の納税や納税回避のため、持分の払戻請求権を行使(上記の例では7,500万円の請求可)または持分の放棄を行うことが考えられます。
- 出資者の一人が持分を放棄した場合
- たとえば、上記例の250万円の出資者A氏が自らの出資持分を放棄した場合、放棄した持分に相当する7,500万円については、その他の出資者に贈与があったとみなされ、他の出資者に贈与税課税のリスクが発生します。
- すべての出資者が持分を放棄した場合
- すべての出資者が持分を放棄した場合、医療法人に贈与があったとみなされ、一定の要件を満たさなければ医療法人が贈与税を支払うこととなります。
出資持分の払戻請求権の存在による不都合を回避するため、出資者に払戻請求権のない、持分のない医療法人へ移行する認定医療法人制度が促進されているのです。
認定医療法人制度
認定医療法人制度の概要
認定医療法人制度は、令和5年9月30日までの期間限定の制度で、この期間内に移行計画を厚生労働省へ申請して、認定を受ける必要があります。
認定を受けた医療法人は、認定の日から3年以内に持分のない医療法人へ移行する必要があり、移行しない場合は認定が取り消され、遡及して課税されます。
また、持分のない医療法人への移行完了後6年間は、毎年、持分なし医療法人の運営状況を厚生労働省へ報告する必要があります。
税制優遇措置の概要
相続人が持分のある医療法人の持分を相続または遺贈により取得した場合、その医療法人が移行計画の認定を受けた医療法人であるときは、移行計画の期間満了まで相続税の納税が猶予され、持分を放棄した場合は、猶予税額が免除されます。
また、出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで、贈与を受けたものとみなして他の出資者に贈与税が課される場合、その医療法人が移行計画の認定を受けた医療法人であるときは、移行計画の期間満了まで贈与税の納税が猶予され、増加した持分を放棄した場合は、猶予税額が免除されます。
さらに、移行計画に基づき持分なし医療法人に移行した場合、出資者の持分放棄に伴う法人贈与税については、非課税となります。
※旧制度(平成29年9月30日以前)により既に認定を受けた医療法人も、新制度による認定を取り直して追加的に優遇を受けることができます。(ただし、当初の移行計画期間は変更不可)
主な認定要件
- 移行計画が社員総会において議決されたものであること
- 出資者等の十分な理解と検討のもとに移行計画が作成され、持分の放棄の見込みが確実と判断されること等、移行計画の有効性及び適切性に疑義がないこと
- 移行計画に記載された移行期限が3年を超えないものであること
- 運営に関する要件を満たすこと(持分なし医療法人へ移行後6年間満たす必要があります。)
- 法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
- 役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること
- 株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
- 遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと
- 法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと
- 社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)にかかる収入金額が全収入金額の80%を超えること
- 自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によること
- 医業収入が医業費用の150%以内であること
持分なし医療法人への移行サポート
への移行サポート
提出書類が多く、時間と手間のかかる持分なし医療法人への移行手続を専門の行政書士がサポートします。
厚労省の補正無しで認定を受けた実績もありますので、安心してご依頼ください。
顧問税理士の先生と協力して手続を進めますので、お気軽にお問い合わせください。